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アウトドアで飲みたいシュワシュワは?
夏、飲みたいものといえば、やはりシュワシュワとした発泡性のお酒。暑さでほてった身体によく冷えた泡酒をグビっと流し込めば……思わず「あ~っ」と声が出てしまうほど気持ちいい。ひとくちにスパークリングと言っても、その発酵のさせ方や材料によって、香りや味わい、のど越しも変わります。今回は夏、とくにアウトドアで楽しみたいお酒を3種、セレクトしました。
安心院スパークリングワイン
安心院と書いて「あじむ」と読みます。私はずっとワイナリーの名前だと思いこんでいたのですが、ある時、クルマで大分県別府から湯布院に向かう途中「安心院」と書いた道路標識を見て驚きました。地名だったのですね。調べてみたら、安心院は宇佐市の南部にある盆地で、肉牛の生産や椎茸の栽培が盛んだそう。また、朝夕の気温差が激しいことがブドウ栽培に適しているため、現在は約170戸の生産者が年間1,300トンものブドウを栽培する西日本髄一のブドウ産地でもあるのだそうです。
この安心院にはふたつのワイナリーがあり、そのうちのひとつ「安心院葡萄酒工房」でつくられているのが、この「安心院スパークリング」。現在、日本のワインは北海道や山梨、長野産がよく知られていますが、「安心院スパークリング」も日本ワイン愛好家から信頼されているワインのひとつです。
その特徴としては、まず仏の本場シャンパーニュと同じくトラディショナル方式でつくられていること。市場に出回っている比較的安価なスパークリングワインはガスを注入されていますが、こちらはワインをボトリングしてから瓶内で発酵させているため、発泡が繊細で、シルキーな飲み心地。次に、シャルドネ100%でつくられているので、シャンパーニュで言うところの「ブラン・ド・ブラン」であること。柑橘類や洋ナシ、リンゴなどの華やかな香りとキリリとした酸が魅力的なこの1本はエレガントなスタイルのワインですので、アウトドアと言っても軽井沢など別荘のテラスで開けるのがぴったりです。
テキカカシードル
シュワシュワしたものを開けたいけど、ワインほどの量を飲めない。もっと軽やかなものを飲みたい。そんな気分のときにはシードルはいかがでしょう。フランス語でシードル(Cidre)、アメリカではハードサイダー(Hard Cider)、スペインではシードラ(Sidra)と呼ばれているのがリンゴの発泡酒です。アルコール度数が3~8%程度と低アルコールで味わいも軽く、飲み疲れしないといま世界的に人気を集めています。
日本でシードルといえば、やはり青森県弘前市のものを推したいと思うのは、私がこどものころの数年を弘前で過ごしたからかもしれません。いえ、私情を抜きにしても、弘前はりんごの生産量全国トップの町ですから、質・量ともにすぐれたシードルに出会える土地柄であることは間違いありません。

「テキカカシードル」は弘前市内のりんご園「もりやま園」でつくられているシードル。テキカカとは摘果作業で摘み取られる未成熟な果実のことだそうで、未利用の資源を活かそうというサステナブルな姿勢に共感しますし、ボトルのデザインとドライな味わいも好きです。この「テキカカシードル」を飲むなら、ちょっとコーディネートにこだわったピクニックテーブルで。シードルは夏の強い日差しを避けて木陰で飲むのがおいしいんです。
反射炉ビヤ
以前は地ビールと呼んでいましたが、いつの間にかクラフトビールと称するようになりました。1994年に酒税法が改正されたことで小規模の事業者もビール製造に参入できるようになり、各地でつくられる個性豊かなクラフトビールが人気を集めています。
「反射炉ビヤ」は江戸時代に大砲を鋳造していた韮山反射炉(炉内の天井や壁で熱を反射させて高温を作り出し、鉄を溶かす炉)の目の前で酒蔵や茶畑、茶店を運営してきた「蔵屋鳴沢」が1997年に創設したクラフトビール。2015年には韮山反射炉がユネスコの無形文化遺産に登録されたことでも注目を集めました。
そのラインナップはイングリッシュペールエールの「太郎左衛門」、アメリカンペールエールの「早雲」、黒ビールの「頼朝」などの定番に、季節ごとに登場する限定ビールが加わり、実にバリエーション豊か。私はヘイジ―と呼ばれるちょっと濁ったタイプで、柑橘の香りがするものが好みです。こんなビールを飲むなら、気の置けない友人たちと海辺や川辺でキャンプしながら……なんてシチュエーションが理想。ビールには太陽がよく似合います。
