お酒をこよなく愛するエディターがいま気になる1本を携えて、やはりお酒大好きな料理研究家のお宅を訪問。ふたりの美味なるものへの探求心から生まれるひと皿とは? 美酒と佳肴の出会いから生まれる、ふたりのおいしい時間へとご案内。

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春らんまんを寿ぐ日本酒スパークリング

秋山 都(以下秋山):春から初夏へ……エアコン要らずで過ごせる心地よい日々ですね。こんなときはシュワっしたと喉ごしのお酒が飲みたいと思いましたが、今日はちょっとひねってこちらをお持ちしました。


真藤舞衣子(以下真藤):わぁ「七賢」じゃないですか! 大好きな山梨県の日本酒ですが、しかもこれ、スパークリングですね。いま色々な酒蔵が日本酒のスパークリングを製造していますが、「七賢」がスパークリングをリリースしたのはとても早かった印象があります。


秋山:たしか2010年代の初めだったかな。いまでこそ日本酒は食事とともに楽しむ“食中酒”としてしっかり認識されていますが、当時は日本酒をワインのように楽しむというのがとても先駆的でしたよね。さらに「七賢」のスパークリングはシャンパーニュのように瓶内で二次発酵させるトラディショナル方式で作られているので、泡がとてもキメ細かく、繊細な口当たりが特徴だから、お料理にも合わせやすいんじゃないかな。

アラン・デュカス
アラン・デュカス スパークリング サケ(アルコール分12度・720ml)

南アルプスの清流で醸される「七賢」

真藤:私は以前住んでいた山梨が大好きでしばしば遊びにいくのですが、この「七賢」をつくっている「山梨銘醸」にも伺ったことがあり、その時の印象は今もなおあざやかに残っています。日本アルプスの中心地である白州エリアにお蔵があるのだけど、お水がきれいでおいしくて。甲斐駒ヶ岳の伏流水で醸す唯一の酒蔵が「七賢」なんですよね。


秋山:山梨は2013年にワインでGI(原産としての地理的表示)を取得。ワイン県として有名ですが、21年には日本酒でもGIを取得し、日本で初めてダブル(ワインと日本酒)でGIを取得した県なのですよね。白州といえば、ウイスキーも有名だし、おいしいお水は良い酒づくりに欠かせませんね……で、今日は何をつくっていただけるのでしょう(笑)?


真藤:「七賢」のスパークリングと言っても、これはアラン・デュカスの名前がついてるからなぁ。デュカスといえばみなさんご存知、モナコの「ルイ・キャーンズ」で史上最年少にしてミシュランの3つ星を獲った、世界的な有名シェフですよね。


秋山:「アラン・デュカス スパークリング サケ」は、和食だけではなくフランス料理にも合う日本酒とは何か、と「七賢」とデュカス本人が対話を重ねた末に生まれた1本。デュカスがプロデュースしているレストランは世界で30軒ほどあるのですが、日本だけでも「ベージュ アラン・デュカス 東京」(銀座)、「ブノワ」(青山)、「エステール」(パレスホテル東京)、「ブノワ 京都」(ザ・ホテル青龍 京都清水)などなど……名店揃い。このお酒はそれらデュカスのお店でもいただけるそうですが、フランス料理店のワインリストに日本酒が載っているなんて、なんだか誇らしいですよね。


真藤:飲んでみると、まず気が付くのはこのきめ細やかな泡立ちとシルキーなテクスチャー。みずみずしさのなかにもふくよかな米の甘みと、ふんわりと果実感を感じるエレガントな味わいですね。


秋山:この色調も春から初夏にふさわしい気分。あっ、水の代わりに一部日本酒で仕込み、さらに桜の木樽で熟成させているんですって。だからフルーティな印象もあるのかな。


日本酒×スパイスの意外な好相性

真藤:日本酒スパークリングでデュカスとくれば……やっぱり洋風なお料理にしましょうか。このみずみずしさを活かせるようにサラダで、でもお酒の個性を表現できるようにチーズやフルーツ、スパイスを使った華やかな一皿にしてみたいと思います。

秋山:おお、桃が入ってる! そういえば、山梨県は桃の生産量日本一でしたっけ。お酒とお料理の材料の産地を合わせるアイデアは素敵。


真藤:まだ旬ではなかったので、今日はコンポートになっているものを使いました。夏になって完熟したものが手に入るようになったらフレッシュなものを使ってもよいと思います。このお酒のユニークな味わいを活かすためにも、少しフルーティな甘みが入ると良さそう。


秋山:そしてこのデュカがまた効いてる! デュカって中近東のスパイスだっけ。自分でこんなに簡単につくれるとは驚きました。


真藤:日本ではエジプト原産と言われることが多いけど、いろんな国でいろんな風につくられているみたい。お肉やお魚料理にもよく合いますよ。


秋山:ナッツって健康を気にして買うのだけど、使いきれなくて余ってしまうことも多いんですよね。こうやってデュカにしておけばお料理にも使えて便利かも。そして、このデュカをつまみに「アラン・デュカス スパークリング サケ」を飲むのも……なんともたまらないおいしさ。


真藤:日本酒とスパイスって意外に相性がいいんですよね。でも都さん、サラダもちゃんと食べてちょうだい(笑)。

リコッタチーズと桃のコンポートのサラダ、デュカかけ


サラダの材料(2人分)

  • ベビーリーフ ひとつかみ
  • 桃のコンポート 1個分
  • ミニトマト(あれば黄色やグリーンのもの)4個
  • リコッタチーズ 60g
  • デュカ 適量
  • オリーブオイル 適量

デュカの材料

  • ミックスナッツ 30g
  • クミンシード 4g
  • コリアンダーシード 3g
  • フェンネルシード 1g
  • 炒りごま 2g
  • 塩 小さじ 1

デュカの作り方

  1. ミックスナッツは包丁で粗く刻む。
  2. ミックスナッツ以外のスパイスと塩はすり鉢などであたってミックスナッツと合わせる。

サラダの作り方

  1. 桃のコンポートはひと口大に、ミニトマトは半切りにしておく。
  2. お皿にベビーリーフ、桃のコンポート、ミニトマト、ほぐしたリコッタチーズをのせ、デュカとオリーブオイルをかける。食べる時は混ぜ合わせて。
秋山都プロフィール真藤舞衣子プロフィール

Photographs by Jun Hasegawa