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6月に入ると、雨の季節。日本には雨にまつわる表現が多くあるが、菜種梅雨、走り梅雨、梅雨入り、戻り梅雨など、梅雨だけ見てもこれだけの呼び名が。鬱陶しい長雨の中で、少しでも季節の変化を楽しもうという思いや天の恵みへの敬意か。昔の日本人のもののとらえ方は、実に豊かだ。そして、外界の喧噪を遠ざけてくれる梅雨は、部屋のここちよさを整えるのに最適な時節である。
今月のチョイスアブソリュートが提案するのは、そんなネスティングにおすすめの、北海道発のこだわりの逸品。馬具メーカー発の革製ルームシューズや、心や空間をより豊かにすることを目的につくられたアートオブジェなど。まるで雨雲の切れ間に差す光のようなインスピレーションを、日常に。
SOMĒS SADDLE ルームシューズ
北海道開拓の歴史を語る上でなくてはならい、馬。その馬具づくりの技術を現代の暮らしに取り入れた砂川市「ソメスサドル」のルームシューズのベースとなっているのは、複雑かつ緻密な構造で知られる革靴づくりだ。
一番の魅力である吸いつくような肌あたりは、高級皮革として知られる豚革のナチュラルレザーの内貼りで実現。人間工学を応用した立体的な甲部のフィット感、計算されたソールの傾斜とあいまって、裸足よりも履いている方が、圧倒的にここちよい快適さをつくりだした。
さらに、革製というとキッチンなどでの水跡が気になるところだが、アッパーに使用した牛革には防水加工をほどこす、またアウトソールには耐摩耗性にすぐれた人工スエードを使用するなど、日用品としての利便性を兼ね備えている点も、機能が重視される馬具をなりわいとしてきたメーカーならではだ。
足を入れた瞬間にリラックスさせてくれる「ソメスサドル」のルームシューズは、家の中で過ごす時間を変えてくれるここちよさのスイッチ。自分のためにはもちろん、「普段使いとしては少々贅沢」な贈りものは、「気がきいている」とよろこばれること請け合い。スリッパの価値観が変わるといって過言ではないほどの魅惑の履きごこちを、ぜひ体感して欲しい。
SOMĒS SADDLE/ソメスサドル
明治以来、北海道の開拓を支えてきた馬、そして馬具づくりの技術。この技を守り、受け継ぎ、世界のマーケットに通用する馬具をつくろう。こうして馬具職人が集まり、頂点を目指すべく1964年に創業した「ソメスサドル」。以来、守り続けてきた「道具屋としての誇り」と、学び続けてきた「本物」を造る心。
先人の技と知恵を受け継ぎ、ものづくりに丹精を込め、毎日の作業の中で生まれる小さな発見を新しい技の創造に繋げて、今日まで愛される製品づくりを続けている。
COSONCO QS アニマルオブジェ エゾヒグマ/シマエナガ
次に、ご紹介するのは「機能性も快適性も進化し環境が整った室内に、大切な景色が失われていないか」という疑問から、生まれたアートオブジェだ。
旭川市の家具メーカー「カンディハウス」と「ソメスサドル」によって生まれた木材×皮革ブランド「コソンコクス」は、製造過程で出る端材をアップサイクルし、アート作品に昇華。現代のリビングにも、和室のしつらえにも似合う「Animal object」シリーズは、雄大な北海道の動物たちをモチーフに、その時々の革の色や木の表情を大切に作り出す世界にたったひとつの小さな1点が、室内へ豊かな表情をつくる大きな存在になるのだから面白い。
「エゾヒグマ」は、肩から腰、臀部にかけて特徴的な骨格を絶妙なバランスでまとめた姿が美しい。「シマエナガ」は、冬場になると人里に現れる、「雪の妖精」ともいわれる愛らしい姿そのままに。手のひらにのせたくなるような、ころんとしたフォルムがなんとも癒される。
暮らしを彩ることで、サステナブルにも、地域にも貢献。心の豊かさも満たしてくれる逸品だ。
COSONCO QS ロッキングホース
最後に、“Functional Toy”というコンセプトを掲げる「コソンコクス」の最高峰をご紹介しよう。馬具製造業から始まった「ソメスサドル」の職人技と、使い心地と安全性を極めた木製家具を作り続けている「カンディハウス」の職人技の粋を極めた「ロッキングホース」(木馬)だ。
馬が少し顎を引いたようなシルエットは、乗馬の際に、もっとも美しいとされる姿勢をモチーフに。北海道産のタモ材を使用し、360度どこから見ても凛とした佇まいにこだわった。そして革製の鞍は、もちろん職人技が光る馬具そのままの本格派。手縫いで立体的なシルエットをつくった2.5ミリ厚の皮革のパーツを組み合わせた。
乗って遊ぶことはできないけれど、目をやるたびに心がなごむ。そんな“新しい価値”が、マチュアな大人ならではの愉しさをもたらしてくれるに違いない。
※「ロッキングホース」も、前述の「Animal object」シリーズも、どちらも一点物のシリアルナンバー入りです。
※「ロッキングホース」は大人が乗っても十分な強度を持っていますが、あくまでもオブジェのため、お子さまが遊ぶ遊具としてはご使用いただけません。万が一、お子さまが触れ事故が生じた際一切の責任を持てませんのでご注意下さい。
COSONCO QS/コソンコクス
北海道旭川市の家具メーカー「カンディハウス」と砂川市の馬具・皮革製品メーカー「ソメスサドル」によって生まれたブランド「コソンコクス」は、アイヌ語で「遠く離れた土地とのコミュニケーション」の意。
デザイナーを倉本仁氏、アートディレクターを谷内晴彦氏が務めている。製造過程で発生する端材を積極的に取り入れ、玩具でも置物でもない、日常の傍で、そっと豊かな気持ちにさせてくれるアートオブジェを提案。革の色も木の表情も、世界でたったひとつの出会いと巡り合わせを。