お酒をこよなく愛するエディターがいま気になる1本を携えて、やはりお酒大好きな料理研究家のお宅を訪問。ふたりの美味なるものへの探求心から生まれるひと皿とは? 美酒と佳肴の出会いから生まれる、ふたりのおいしい時間へとご案内。

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赤と白、どっちにもイケる酒肴とは?

秋山都(以下秋山):今日は「ココファーム」のワイン。それも2本セットをお持ちしました。


真藤舞衣子(以下真藤):「ココファーム」! 栃木県足利市にあるんでしたよね。いま日本ワインはカルトな人気をもっていますが、「ココファーム」も品質の高いワインづくりで定評のあるワイナリーです。しかも赤と白の2本も!


秋山:実は今日試してみたいことがあって。よく、赤ワインは肉料理に、白ワインは魚料理に合うといいますよね。でも、本当かしら。先日、お鮨屋さんでマグロに合わせてピノ・ノワールのワインをおすすめされて驚いたんですが、意外に合ったんです。たとえば一皿の料理でも、赤と白、両方のワインに合うように作れるものでしょうか?


真藤:一般的に赤は肉、白は魚というのは理解できるけど、それだけじゃないですよね。今回は牛肉を使って、赤ワインにも白ワインにも合う料理を作ってみましょうか。


「月と太陽セット」は、「陽はまた昇る」(タナ、カベルネ・ソーヴィニヨン)と「月を待つ」(ケルナー、ソーヴィニヨン・ブラン、アリゴテ)の2本(ともに750ml)がセットになっている。

日本ワインの歴史に名を刻む「ココ・ファーム・ワイナリー」

真藤:(味見をしながら)うん、「ココ・ファーム・ワイナリー」のワインはおいしい。足利市っていわゆるワインリージョンではないけれど、北海道の自社管理畑や全国の契約栽培農家のブドウなど使いながら、本当にこだわってつくっているのがわかりますね。


秋山:創業は1980年というから日本のワイナリーとしてはかなり歴史があるほうですが、そもそもの始まりは1950年代にハンディキャップのあるこどもたちとそのクラスの担任の先生がブドウ畑を開墾したことから始まっているんですって。その後、1969年には成人対象の知的障害者更生施設「こころみ学園」として認可されています。。


真藤:何度か伺ったことがありますが、いまも「こころみ学園」の人々がブドウ栽培やワインづくりに携わっているんでしたよね。ソーシャル・インクルージョンなんていう言葉が一般的になるずっと前から、 いろんな人を受けいれて活躍の場をつくっていくのは本当に素晴らしいことです。尊敬しています。


秋山:その志は確かにすごいけど、「ココ・ファーム・ワイナリー」のワインはその成り立ちを知らないで飲んでもおいしいのがすごい(笑)。ワインに使用するブドウをみても、ピノ・グリ、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、アルバリーニョ、シュナン・ブラン、プティ・マンサン、リースリング・リオン、カベルネ・フラン……などバリエーションも豊か。


真藤:この赤「陽はまた昇る」はタナ89%にカベルネ・ソーヴィニヨン11%か……。タナって“タンニン”という言葉の語源になっているだけあって、ちょっと渋いワインが多いのだけど、これはカベルネ・ソーヴィニヨンが入ることで丸みを帯びてバランスがいい。すき焼きとか照り焼きとか、醤油ベースのお料理にもよく合いそう。


秋山:もう1本の白「月を待つ」はケルナー主体(77%)。ほかにソーヴィニヨン・ブラン22%にアリゴテ1%だって。ケルナーはドイツ系のワイン用ブドウ品種ですが、華やかな香りとみずみずしい酸が感じられていいなぁ、これ。


真藤:また「陽はまた昇る」「月を待つ」というネーミングもいいですよね。詩的で、どこかポジティブな響きがあります。友人たちにこのセットをプレゼントとして贈るのもよさそう。

栃木県の特産が意外な効果を発揮!

秋山:じゃあこのワイン2本に合う一皿って、どんなものを?


真藤:シンプルに牛肉と野菜を炒めてみようと思います。この赤ワインはちょっとスパイシーな感じもあって、醤油ベースの甘辛いソースと合いそう。そこに白ワインと合う要素も加えたくて、トマトも一緒に炒めてみようかと。

秋山:牛肉とトマトってなんだか意外な組み合わせ。ちょっと前にトマトすき焼きって流行ったけど、そんな感じなのかな。 (食べてみて)、何これ! 本当に醤油とみりんだけですか? ものすごくおいしいんですけど! しかもシャキシャキした意外な食感のものが……これ、何ですか?


真藤:それ、いいでしょう。実はね、干ぴょうなんです。干ぴょうも栃木の特産品なので、栃木というテロワールに敬意を表してみました。

秋山:干ぴょうって甘辛く煮て、海苔巻きに使うアレよね。牛肉のうまみ、トマトの酸味、調味料を吸ってものすご~くおいしい。お代わりしたい。ワインとのペアリングという観点からも、白ワインはお料理にフレッシュな酸味を補ってくれるようだし、赤ワインはまろやかな果実味が全体を包み込むような感じ。たしかに2本ともこの一皿でイケますね。お代わりお願いします。


真藤:ペロリと召し上がっていただいてうれしい。でも足りなかったみたいだから、もう少し何かつくりましょうか(笑)。


「牛肉と干ぴょうのトマト炒め」


材料(2人分)

  • 牛肉切り落とし 200g
  • 玉ねぎ 1/4玉
  • トマト 中玉1個
  • 干ぴょう 15 g
  • いんげん 6本

  • 醤油 大さじ2
  • みりん 大さじ2
  • 黒胡椒 適量
  • オリーブオイル 大さじ1

作り方

  1. いんげんは硬めにサッと下茹でしておく。
  2. 干ぴょうは水で戻し、水を切り、5㎝幅に切っておく。玉ねぎとトマトはくし切りに。
  3. 熱したフライパンに玉ねぎのくし切りを入れ炒め、しんなりしたら干ぴょう、牛肉の順に炒め合わせる。
  4. 醤油とみりんで味をつけたら、いんげんとトマトのくし切りを入れ、さっと炒め、仕上げに黒胡椒を振る。
秋山都プロフィール真藤舞衣子プロフィール

Photographs by Jun Hasegawa